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VDEC×CSO スターターズプログラム・夕方セミナーPartIが行われました(第1回:仙台市経済局スタートアップ支援課稲舟基久さん、矢口あかねさん)(11/27)

 東北大学バリューデザイン教育センターは、2025年11、12月、キャリア・社会連携支援センターと共催し、「スターターズプログラム・夕方セミナーPartI」を開催しました。

 3回シリーズで学外から講師の方々をお招きし、これまでのキャリアの歩みや、どのように社会の課題と向き合い、価値を生み出してきたのか、お話を伺いました。今回お話を伺ったのは、仙台市経済局イノベーション推進部スタートアップ支援課で起業家支援を担う稲舟基久さんと矢口あかねさんです。仙台市では近年、仙台・東北から世界で活躍するスタートアップを生み出すエコシステムづくりを進めており、お二人は行政の立場から起業家・スタートアップ支援に取り組んでいます。

 経済産業省への出向経験を持つ稲舟さんと、大学時代に商学部で学んだ知識を現在の実務に活かしている矢口さん。お二人は、これまでのキャリアや学びが今の仕事に確かにつながっていると語ります。今回は、スタートアップ支援に携わるまでの歩みや、仕事に込める想いについて伺いました東北大学バリューデザイン教育センターは、2025年11、12月、キャリア・社会連携支援センターと共催し、「スターターズプログラム・夕方セミナーPartI」を開催しました。

 3回シリーズで学外から講師の方々をお招きし、これまでのキャリアの歩みや、どのように社会の課題と向き合い、価値を生み出してきたのか、お話を伺いました。

国への出向経験を、仙台のスタートアップ支援に活かす(稲舟さん)

 2014年に仙台市役所へ入庁した稲舟さんは、広報や健康保険に関する業務を経験し、2019年から2年間経済産業省に出向しました。この出向でスタートアップ企業の支援を担当したことが大きな転機になりました。ある先輩からは「スタートアップは世界を変える神様のような存在。我々はその神様たちを支えるんだ」という言葉をかけられたといいます。経済産業省での仕事は、日本全体の方針づくりやガイドライン策定が中心で、自分が考えたことが“国の取り組み”として世の中に発信されていくスケールの大きさに驚いたと語りました。

 この経験を通して、英会話の習得はもちろん、予算をつけて事業を動かすプロセス、スタートアップの実態、そしてプロジェクトを前に進めるための泥臭いスキルも身につきました。

 出向を終えた現在は、仙台市産業振興課に戻り、経産省時代に培った視座を活かして、シリコンバレー派遣プログラム(SGSC)の立ち上げや大学発ベンチャー支援(EIR)を推進しています。国レベルとは異なり、地域に戻ってからは、個々の企業に寄り添う支援を行っています。

 現在、海外に出張にいくことも多いという稲舟さん。
「海外で仕事がしたいけれど、どうすれば実現できるのか?と疑問に思う学生もいるかと思う。そんな時は、目標を“待つ”のではなく“つくる”姿勢が重要」と語りました。

具体的には、海外に関わる事業やプロジェクトを自ら企画し、必要なパートナーや資源を巻き込みながら形にしていくことで、「行きたい場所に仕事をつくる」ことができるといいます。

 また、行政には独特の「お作法」があり、それが起業家支援の障壁となることも少なくありません。稲舟さんは「我々は行政と起業家との間にあるギャップを埋める存在として、東北の起業家エコシステムを現場から支え続けていきたい」と語りました。

学びを力に変え、公務員として起業家を支える(矢口さん)

 矢口さんが公務員の道を志した原点は、大学3年生の時に経験した東日本大震災にあります。当時、大学のボランティアセンターを通じて名取市閖上(ゆりあげ)地区での活動に参加した際、「属性や肩書きがなくなった時、私に残るものは何だろうか」「山形県出身の自分が東京で就職したら両親にあと何回会えるのだろうか」と自身の人生を深く内省し、被災地である名取市役所への入庁を決意しました。

 2013年に名取市役所へ入庁後、下水道課を経て商工観光課で企業誘致を担当しました。専門知識の不足に焦りを感じ、独学で宅地建物取引士(宅建)の資格を取得。知識を武器に、名取市内に立地する企業を支援できるよう努めました。その後は政策企画課で副市長秘書の業務を担当するなどの経験を積みました。


 2018年、矢口さんは仙台市役所へ入庁し、新たなキャリアをスタートさせます。障害者福祉や児童福祉の部署を経て経済局スタートアップ支援課に所属し、東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-biz)や、大学生向けの起業家教育事業(SIAC)などを担当しています。現在の部署に異動してから、大学時代に商学部で学んだ知識が実務の勘所として活きるようになり、「大学での学びは必ずどこかで役に立つ」ことを実感しているといいます。

 矢口さんがキャリアを考える上で大切にしているのが「解像度を上げる」ことです。例えば「好き」は感情なので波があり不安定なものですが、「好き」を仕事にしたときの「自分の役割」や「責任」まで引き受けた時に行動できる。まずは、「好き」の裏にある現実(地道な作業や大変な業務なども含む)を調べたり、興味があることや担当したい仕事が何かを言語化して、解像度を上げることが重要だと語ります。「今後も東北の次世代を担う起業家の支援に取り組んでいきたい」と話しました。

キャリアにおける起業の価値

 講話の後に行われた学生との質疑応答では、「起業で失敗した人はその後どうなるのか?」という質問が寄せられました。

 スタートアップ支援を行う中で、事業がうまくいかなかったケースも見てきた稲舟さんは、起業経験によってキャリアの選択肢はむしろ広がると強調します。

 特に大手企業では、0から事業を立ち上げ、仮説検証や意思決定を重ねてきた人材が高く評価されており、起業経験者が中途採用されるケースも少なくありません。「失敗=キャリアの終わり」では決してないと語りました。

 「起業を通じて培われる企画力・実行力・マネジメント力は汎用性が高く、強力な武器になる。だからこそ、起業へのハードルを必要以上に上げず、たとえうまくいかなかったとしても他の選択肢があることを知ってほしい」と学生たちに呼びかけました。